『金色夜叉』(こんじきやしゃ)
はじめに
「金色夜叉」とは「お金と美貌、その亡者」の意味らしい。
結婚を約束した若い男女、貫一とお宮だったが、結婚間際になってお宮が、資産家と婚約した。
傷ついた貫一は、高利貸しに成って、復讐しようとする。
ところが、お宮の方は、貫一の自分に対する想いをあらためて知り、後悔に暮らした。
お宮は自分が飛び抜けた美貌の持ち主であることを十分認識していた。
だから、両親が決めたとは言え、将来どうなるか分からない貫一と結婚するのは、気が進まない。
楽しい結婚生活を望むなら貫一なのだが・・・
それとも裕福な暮らしか?
今の女性なら鼻で笑い飛ばしそうだ。
実は、お宮には本文では語られていない本心があり、それが謎とされている。
熱海の海岸で、説明しようとしたのだが、貫一は聞く耳を持たなかった。
最後まで、小説の中のどこにも書かれていないんですね。
じゃあ、なぜ、本心が分かったか?
はい、なんとまあ、当時流行った歌の歌詞の三番目に謡われているのです。
あっははは
貫一の留学費を捻出する為に嫁いのだ、と。
ええ~っ!?
これは下手な言い訳としか聞こえないなあ~、あははは
『金色夜叉』は読売新聞に明治三十年(1897年)から連載された尾崎紅葉の小説で、大人気を博した。
その証に、六年半に亘る長期連載となった。
後に、単行本化、映画化、ドラマ化もされた。
これを羨んだのが朝日新聞で、尾崎紅葉に比肩する小説家として、夏目漱石を大学から引き抜いた。
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【登場人物】
間 貫一(はざま かんいち) 大学生。お宮と婚約していた。名前は、恋とお金の間で一途に貫き通したの意味か(笑)
鴫沢 宮(しぎさわ みや) 通称「お宮」。鴫沢家の一人娘。寛一と婚約していた。貫一は「みい」さんと呼ぶ。
富山 唯継(とみやま ただつぐ) お宮と結婚した資産家。名前は「親の山の様な富をただ継いだだけのボンボン」の意味。
荒尾譲介(あらお じょうすけ) 貫一の親友で主要人物の一人。「外見は荒々しいが礼儀をわきまえた男」という意味。
【解説】
『金色夜叉』 原文は、雅俗折衷文という文体で、地の文は文語体、会話文は口語体で書かれています。
加えて、西欧風の「!」「?」「??」などの句読法が使われている。
また、「うむ」「あら、まあ」といった感嘆詞が組み合わされている。
現代では普通だが、当時では大変目新しい表現だった。
なお、「その1」~「その38」の分割は、私が恣意的に分けたものです。
原文中の赤字は、下記で語彙説明しています。
〔〕は、私が追記したものです。
語彙説明中の緑色の文字は、新かな遣い、新字体で書いたものです。
その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10 その11
その12 その13 その14 その15 その16 その17 その18 その19 その20 その21 その22
その23 その24 その25 その26 その27 その28 その29 その30 その31 その32 その33
その34 その35 その36 その37 その38
【参照】
原文: 『明治文學全集 18 尾崎紅葉集』 1965年(昭和40年)4月10日初版発行 筑摩書房