春本版『四畳半襖の下張』(よじょうはんふすまのしたばり)
18歳未満入室禁止です!(笑)
私流の現代口語訳 全文(3)
《山人》
金阜山人が言うには、一枚の紙がここで終っていた。
後はどの紙へ続くのやら、この一行は、これで終りなのだろうか。
それにしても次の紙片を読んでいくと、もう全く恐れ入ってしまう。
《主人公》
これぞと思う芸者を、茶屋の女将に言いふくめて承知させた晩は、
まことに胸もウキウキするのだが、後で女に聞くと、
一二回目では、気心も知れず、気兼ねもするので、情が移ることはないのだという。
この点だけでも男と女は違う。
大概女は、傍き目も振らず一人の男に情が深くなる者が多い。
だが、男の方は、多くの女と浅く広く関わりたいと願うものだ。
女が男に親しみ、情が移って少し我儘を言うようになると、男は飽きたわけではないが、
珍しさが薄れて、始めの頃ほどチヤホヤしなくなる。
女の嫉妬は、ここから始まる。(笑)
【解説】
著者(永井荷風)、金阜山人、古人(主人公)の3者が入れ子構造で話が構成されており、
話し手を、それぞれ、《著者》、《山人》、《主人公》 と小文字で示す。
話の大半は「古人」の主人公であり、ページに話し手を示していない場合は、主人公である。
ちょっと一服