ちょっと一服  その17  四畳半奮闘記。その2   



春本版の『四畳半襖の下張』は、よく探してみるとネット上に在った。

な~んだ、と落胆したが、丹念に読んでみると、間違いが散見される。


大阪府立図書館で見付けた『永井荷風「四畳半襖の下張」惣ざらえ』は、流石、完璧である。

私は、これを参考に現代口語訳を書いた。


しかし、一箇所、私が疑問に思う点があった。


何か?

それは「蒸し返し(むしかえし)」という語彙である。

手による写し書きが重ねられ、地下出版されたものなのだ。

三豕渡河(さんしとか)魯魚章草(ろぎょしょうそう)と言う。

読み間違い、書き間違いが、大いに考えられる。

本稿に興味をお持ちの方は、直ぐにピンと来たに違いない。

そう!

「蒸し返し」ではなく、「燕返し(つばめがえし)」ではないか?


詳細に検討して、著者へ提案しようと思う。



 


 『永井荷風「四畳半襖の下張」惣ざらえ』

 編集:高橋 俊夫
 発行日:平成9年(1997年)10月1日
 出版社:大空社


【解説】

 三豕渡河(さんし‐とか)・・・文字を間違えること。

 チャイナの春秋時代の子夏が旅の途中に、「晋の軍隊が三匹の豕と河を渡った」と史書を読んでいるのを聞き、
 「己」を「三」、「亥」を「豕」と読み間違えて、三匹の豕ではなく、年号の己亥の年と読み間違えたのだろうと指摘したという
 故事から。

 魯魚章草(ろぎょ‐しょうそう)・・・文字を書き誤ること。

 「魯」と「魚」、「章」と「草」はそれぞれ字の形が似ていて間違えやすいことから。



 次の文   前の文   索引      TOP‐s