洪水天に滔る(こうずいてんにはびこる)  その2


 【還暦ジジイの説明】


 自然災害には色々ある。

 日本では地震、台風、それと近年では火山の噴火か。外国では、竜巻もある。

 台風に伴って怖いのが、暴風雨と洪水と山崩れ。

 洪水の土石流は、麓の家屋や田畑を全て洗い流す。


 歴史には戦争と言う人間の愚行がある。

 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナへ侵攻し、工場、学校、駅、住宅を破壊し、多くの民間人を無差別に殺戮している。

 ウクライナ全土を焼尽くそうとしている。

 古代チャイナも戦争に因って多くの民が殺され、家屋も焼尽くされて来た。


 則ち、大規模な戦争は、大きな自然災害に匹敵するのだ。

 従って、戦争に勝って自国を守るのも、自然災害の被害を最小限に食い止めるのも、同じ。

 戦争を指揮した将軍と、自然災害を食い止めた工事責任者も、同等の功績なのだ。


 ()は、父・(こん)の失敗から学んで、見事、治水工事を成功させた。

 この時の皇帝が(しゅん)

 前皇帝・(ぎょう)と現皇帝・舜は、後世、お手本とすべき名君であり、聖人である、と、孔子が絶賛している。

 孔子は、

 「私は何も新しいことを語っているのではない。堯や舜が既に実践したことを見倣えばよい、と言っているだけだ」

 と弟子に伝えたほど、評価していた。


 舜帝は、禹に皇帝の座を禅譲した。

 ヒェーッ!!

 ですよねえ!

 春秋戦国時代、三国志時代、その後も、皇帝の座を争って他国と戦争もし、国内でも身内同士で殺しあっている。

 それほど欲しい、垂涎の権力の座である。

 いくら名君、聖人とは言え、その皇帝の座を一介の官僚に譲ったのである。

 ヒェーッ!!

 でしょう?


 しかし、冷静に考えてみると、ヒェーッ!などと驚くより、それほど洪水が大変な被害を齎していたのだろう。

 それも十数年に亘って。

 それを堰き止めた禹は、神様のように、民は崇めたのではないか。


 従って、神様に帝位を譲るのは、極々しぜんな成り行きだったのかも知れない。


 私なんか、工事に失敗したからと言って処刑するような君主なんて、愚昧な暴君じゃないか、と思う。

 父親を殺された恨みで、いくら指名されようが、治水工事なんか快く引き受けないだろう、と想像した。


 そうじゃあなかったんですね。

 それだけ責任が重かったんですね。

 父も子も自分の使命感で、命懸けで取組んでいたんですね。

 多くの人民の命を守るために。

 君主から命じられたのは、名誉であって、苦痛でも何でもなかった。

 だから処刑されても、それは納得していて、寧ろ、申し訳ないと無念の思いだったんでしょう。


 その後、代々禹の子孫が帝位を嗣いだので、ここにチャイナ最初の世襲王朝(夏王朝)が成立しました。

 夏王朝は、紀元前2100年頃~前1600年頃までで、史書には初代の()から末代の(けつ)まで17代、ほぼ471年続いた。


【日本の自然災害の被害概要】

  室戸台風(1934年、昭和9年)の被害: 死者3千人、負傷者15千人、全壊半壊92千軒、床浸水401千軒。

  枕崎台風(1945年、昭和20年)の被害: 死者2千人、負傷者2千人、全壊半壊90千軒、床浸水274千軒。

  伊勢湾台風(1959年、昭和34年)の被害: 死者5千人、負傷者39千人、全壊半壊154千軒、床浸水363千軒。

  阪神淡路大震災(1995年、平成7年)の被害: 死者6千人、負傷者43千人、全壊全焼111千軒、半壊半焼7千軒。

  東日本大震災(2011年、平成23年)の被害: 死者16千人、負傷者6千人、全壊全焼122千軒、半壊半焼298千軒。


【戦争による被害概要】

  日清戦争(1894~1895年): 死者 5万人(日本 1.38万人、清 3.5万人?)

  日露戦争(1904~1905年): 死者 15万人(日本 11.56万人、露 4.26万人)

  第一次世界大戦(1914~1918年): 死者 853万人(露 170万人、仏 136万人、独 177万人、墺 120万人、他250万人)

  第二次世界大戦(1939~1945年): 死者 6399万人〔兵912万人、市民5487万人〕(日本 310万人、独 689万人、墺 118万人、ソ連2060万人、チャイナ1321万人、波 603万人、ユーゴ 171万人、比 111万人、越 200万人、インドネシア400万人、印 150万人、他266万人)

  朝鮮戦争(1950~1953年): 死者 636万人(韓国 240万人、朝鮮 292万人、米 14万人、チャイナ 90万人)

  ベトナム戦争(1960~1975年): 死者 814万人(南べ 335万人、北べ 478万人)


 次の文   前の文      索引  TOP-s