漢詩とは何か その3


 次に七言絶句を例詩「汪倫に贈る」で説明します。


 〔原文〕

   贈汪倫   李白

      1 2 3 4 5 6 7   1 2  3 4  5 6 7

 (起)  李白乘舟將欲行   ▲▲ ○○ ○▲

 (承)  忽聞岸上踏歌聲   ▲○ ▲▲ ▲○

 (転)  桃花潭水深千尺   ○○ ○▲ ○○▲

 (結)  不及汪倫送我情   ▲▲ ○○ ▲▲



 <読み下し文、現代口語訳は、こちら


【説明】


 近体の七言詩は、二字目、四字目、六字目がポイントになります。

 各句の二字目、四字目、六字目を同様に○▲で見ますと、二字目と四字目の○▲が逆になり、

 四字目と六字目の○▲が逆になっていることが分かります。

 そして、二字目と六字目の○▲は同じになっています。

 これを「二四不同(にしふどう)二六対(にろくつい)」と呼びます。


 押韻は、起句「行」・承句「聲」・結句「情」です。

 日本語で発音するとちょっと違います。

 元々、日本語では母音が5個しかありませんが、チャイナでは韻母というものが106個あります。

 それによって、響きが違うので同じになりません。

 それどころか、古代チャイナと現代チャイナでさえ発音が異なるので、同じ響きにならないのです。

 大体から、日本でさえ東北と九州では言葉も発音も異なります。

 広大なチャイナでは尚更です。


  <続く・・・>


【解説】

〇詩の形式による分類

 詩には、句数と字数が決っている定形の詩と、そうではない詩があります。

 定型詩は、絶句(ぜっく)律詩(りっし)という分類の詩があり、これを「近体詩/今体詩(きんたいし)」と言います。

 近体詩は、「平仄(ひょうそく)を合せる」ことと「(いん)()む(押韻(おういん))」という規則があります。

 近体詩以外の詩は古体詩(こたいし)と言い、これは韻を踏みますが、平仄を合せる必要はない詩です。


〇「平仄(ひょうそく)を合せる」とは。

  絶句や律詩の近体詩に、平字と仄字が規則的に配列することを言います。

 「(いん)()む」とは、同じ韻の字を詩句の特定の場所に置くことを言います。

 また、韻を踏むことを「押韻(おういん)」とも言います。


〇詩の数え方。

 一首、二首と「(しゅ)」で数えます。

 長編の場合は一篇、二篇と「(へん)」で数えることもあります。


()とは。

 詩は、行ごとに示すと分かり易いので、行ごとに改行します。

 その行のことを「()」と呼びます。

 一句が五字でできているものを五言(ごごん)の句、七字でできているものを七言(しちごん)の句と呼びます。



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