子一章(こいっしょう) /囝一章(けんいっしょう)   作:顧況


【還暦ジジイの説明】

 註:「子一章」は本来「囝一章」と書くのだが、ブラウザーによっては文字化けするので、「子」としました。

 今から1200年前、子供が七八歳になると、役人が連れて去って、首枷(くびかせ)を付けて奴隷(どれい)として使う。

 親は逆らえず、慟哭(どうこく)し、子供を()んだことを後悔する。

 昔は(ひど)かったんだなあ~

 なんて、暢気(のんき)なことを言う(なか)れ。

 今のチャイナは、もっと酷い。

 臓器を抜くのである。

 ギャーッ!!

 本当ですよ~


【原文】


  題: 子一章

 生闘方 閩吏得之
 乃絶其陽 為臧為獲
 致金満屋 為髠為鉗
 如視草木 天道無知
 我儸其毒 神道無知

 彼受其福 郎罷別
 吾悔生汝 及汝既生

 人勧不挙 不従人言
 果獲是苦 別郎罷
 心摧血下 隔地絶天
 及至黄泉 不得在郎罷前


【読み下し文】


  題: 子一章

子 閩方(びんぽう)に生まる  閩吏(びんり) (これ)を得て

(すなわ)ち ()(よう)()つ  (ぞう)()し (かく)と為し

(きん)(いた)して (おく)()たしむ  (こん)を為し (けん)を為し

草木(そうもく)()るが(ごと)し  天道(てんどう)知る無く

()れ ()の毒に(かか)る  神道(しんどう)知る無く


()れ 其の福を()く  郎罷(ろうは) 子に(わか)

()(なんじ)を ()みしを ()ゆ  汝の(すで)に (うま)るるに(およ)


(ひと) ()げざるを(すす)む  人の(げん)(したが)はず

(はた)して ()()()たり  子 郎罷(ろうは)(わか)

心摧(こころくだ)け 血下(ちなが)る  ()(へだ)て (てん)を絶ち

黄泉(こうせん)(いた)るに 及ぶまで  郎罷(ろうは)(まえ)()るを()ざらん


【現代口語文】


  題: 子一章

 子どもが(びん)の地方に生まれると、閩の役人はこれをとらえ、なんと、むごくも去勢(きょせい)してしまう。

 それを自分の下僕(げぼく)とし、金にあかせて、家中に何人も置く。

 髪をそり落とし、首枷をはめ、まるで草木(くさき)を扱うようなむごさ。

 「天の神様はご存知ない。ぼくがひどい目に会っているのに。天の神様はご存知ない。あいつが旨い汁を吸っているのに」。

 父親は今、我が子と別れる。

 「わたしはお前を生んだことを悔んでいる。お前が生まれ落ちた時、人さまは、育てるなと言ってくれた。人の言葉を聞かなかったばかりに、やっぱりこんな苦しみを受けたのだ」。

 息子は今、その父と別れる。胸は()()け、血も流れんばかり。

「遠く天と地を隔てあい。死んだあの世に行くまでは、父さんの顔が見られぬとは」。


 縦書きPDFで見る場合はこちら


【人物 略歴】

〇顧 況(こ きょう、西暦725年~814年?、没90歳?)

 チャイナ唐の詩人。字は逋翁。号を華陽山人、悲翁。

 蘇州海塩県の出身。

 『華陽真逸詩』二巻などが残っている。


【語彙説明】

〇子(こ)。本来は囝(けん)・・・閩(福建省地方)の方言で、子どものこと。

〇郎罷(ろうは)・・・閩の方言で、父のこと。

〇陽ヲ絶ツ(ようヲたツ)・・・男子を去勢する。

〇臧ト為シ獲ト為シ(ぞうトなシかくトなシ)・・・臧は下男、獲は下女。卑しめて言う言葉。

〇髠(こん)・・・髪を剃り落とす(逃亡を防ぐため)。

〇鉗(けん)・・・首かせをはめる(逃亡を防ぐため)。

〔参考〕代表的な労役刑(強制労働を科す刑罰)「(こん)(けん)(じょう)(たん)(しゅん)」がある。

〇毒(どく)・・・毒手。悪辣(あくらつ)なやりかた。

〇天道・神道(てんどう、しんどう)・・・天の神様。二句に分けた言いかた。

〇黄泉(こうせん)・・・地下の国。死者の世界。


【参照】

 『はじめて読む唐詩5』 松浦友久/田口暢穂・編著 明治書院 1998年6月5日発行


 次の詩    前の詩     漢詩の部屋  TOP-s