『詩経』 小雅 「鴻鴈之什」 鶴鳴 その1 (しきょう しょうが こうがんのじゅう かくめい)


【還暦ジジイの説明】


 漢詩の解釈には色々あって、この詩も解釈が分れる。


 この「鶴鳴」は、「他山の石」で有名な漢詩です。

 「他人(ひと)のふり見て我がふり直せ」「反面教師」と同じ意味で使われ、

 「他人の失敗を嘲笑ったり、批判したりせず、自分の失敗として受け止め、教訓とせよ」

 と言う、戒めです。

 冒頭の「九皐の鶴の鳴き声は天にも届く」は「賢人は身を隠しても、その名声は広く世間に知れ渡る」と言う意味です。


 詩全体としては、「野に潜む賢者を見出して、国を治めよ」と男性的、政治的、哲学的に捉えるものなのでしょうね。


 ところが、もう一つの解釈がある。

 他国から嫁いできた花嫁を讃える祝頌詩(しゅくしょうし)である、とする説です。

 全く意味も、趣も違いますね(笑)


 まず、今回は、最も一般的な前者の説を紹介します。


【現代口語文】


 詩の題名: 鶴鳴

  〔第二章のみ〕

 鶴 深き沢に鳴き、声 天に満つる

 魚が渚に浮遊し 淵に潜んだり

 庭の美しさを楽しみ、そこには香木もある

 下には雑木がある

 他山の石を、砥石としよう


【真意】  ~眉雪の勝手読み~


 他人のどんなつまらない言動でも、自己の修養や反省の糧とすることができる。


【読み下し文】   註:歴史的かな遣い、正漢字


  鶴鳴(かくめい)

  〔第二章のみ〕

 (かく) 九皐(きうかう) に()き  (こゑ) 天(てん)()こゆ

 (うを) (しよ)()り (ある)いは (ひそ)みて (ふち)()

 (たの)しきかな ()(その)は (ここ)に 樹檀有(じゆだんあ)

 ()(した)に ()(こく)

 它山(たざん)の石も  (もつ)(ぎよく)(みが)()


【原文】


  鶴鳴


 鶴鳴于九皐 聲聞于天

 魚在于渚  或潛在淵

 樂彼之園  爰有樹檀

 其下維穀

 它山之石  可以攻玉


【語彙説明】   註:()カッコ内は、出典。


〇鶴(かく) ・・・ 鳥の「ツル」。

〇于 ・・・ 「于」は衍字(えんじ)で、語句の中に間違って入った不必要な文字。よって、飛ばして読む。

〇九皐(きゅうこう) ・・・ 奥深い沢。

〇淵(ふち) ・・・ 水の深い所。

〇渚(しょ) ・・・ 水ぎわの地。

〇爰(ここ)に ・・・ 「ここに」と読む語助詞。

〇樹檀(じゅだん) ・・・ ムクノキ。

〇它山(たざん) ・・・ ほかの山。よその山。「它」は「他」と同じ。

〇錯(さく) ・・・ 玉を磨く砥石の意。

〇穀(こく) ・・・ 樹木の「コウゾ」のこと。

〇攻(みが)く ・・・ 「錯」と同様、玉を磨く、研ぐの意。


【参照文献】


 『xxxxx』  xxx・著 xxx書店 xxxx年(昭和xx年)xx月xx日発行



【訳者プロフィール】




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