春望(しゅんぼう) 作:杜甫
【還暦ジジイの説明】
杜甫は漢詩の中でもとりわけ律詩の名人と謳われました。
『春望』は杜甫が46歳(西暦758年)、杜甫は安禄山の乱に巻き込まれて長安で軟禁状態だったときに書かれた五言律詩。
文構造的、語彙的、内容的にも見事。
日本でも名作としての評価が高い。
【原文】
春望 杜甫
國破山河在
城春草木深
感時花濺涙
恨別鳥驚心
烽火連三月
家書抵萬金
白頭掻更短
渾欲不勝簪
【読み下し文】
春望 杜甫
国破れて山河在り
城 春にして 草木深し
時に感じては 花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは 鳥にも心を驚かす
烽火 三月に連なり
家書 万金に抵る
白頭 掻けば更に短く
渾べて簪に勝たへざらんと欲す
【現代口語訳】
国都長安は戦争で破壊されてしまったが、山や川は相変わらず昔のまま今もここにある。
荒れ果てた長安の町は、春を迎えたけれど草や木だけが勢いよく生い茂っている。
この戦乱の時代を思うと、美しい花を見ても涙が流れ、
家族との別れを嘆いては、きれいな声で鳴く鳥のさえずりにも心が痛む。
戦火は三ヶ月も続いており、
家族からの手紙は万金に値するほど貴重だ。(全く来ない。)
白髪だらけの頭は、心労で掻けば掻くほど(髪の毛が抜けて)薄くなり、
冠を止める簪を挿せなくなりそうだ。
【解説】
形式は、五言律詩。 深・心・金 ・簪が韻を踏んでいる。
作詩された時代は、盛唐(西暦758年)。
【語彙説明】