将棋の話― 観る将ファンの為に ―


  第3局 棋士の気質 その2



 サラリーマンの同僚や上司など、会社に所属する人は、基本敵に仲間である。

 勿論(もちろん)、一般の会社でも、営業マン同士の場合は、営業成績の競争などがあり、ライバル関係にある。

 と、仰るかも知れない。

 しかし、それは両者とも勝者となるウィンウィン(WinWin)の関係です。

 更に会社も勝者となる関係です。


 ところが、棋士は、違う。

 片方が勝者となれば、もう片方は敗者となる。

 両者とも勝者となるウィンウィン(WinWin)の関係ではありません。

 同世代の棋士は(もと)より、親子ほど年齢の離れた先輩も後輩も、皆、ライバル、敵である。


  将棋を普及し、将棋界を繁栄させるという大目的は同じなのだが、直近の目標は、対局で勝つこと。則ち、同僚に勝つことだ。


 ここが根本的に違う。

 しぜん心持(こころもち)も大きく異なる。

 従って、棋士同士仲良くすることとは、相容(あいい)れないのである。


  それでも昭和時代に比べたら、平成の棋士達は、実に仲が良い。隔世の感がある。
  棋士仲間で研究会、勉強会をするなんて、昭和時代は、極僅かだった。
  「棋士は山に籠って(実際は山に籠らないが)独りで研究するもの」という空気があった。
  「研究会なんて、詰将棋の答えを安易に見ると同じ。力が付かない。」と先輩棋士は仰るのだ。
  その空気を完全に打破したのが、故・米長邦雄永世棋聖。若手棋士を集めた「米長道場」を開いた。



  <続く・・・>


【解説】

○羽生さん・・・将棋棋士・羽生善治永世七冠のこと。

  羽生善治(はぶよしはる)のプロフィール。(詳細 wikipedia

  将棋界が実力制になって約80年、史上最強の棋士。

  将棋界七大タイトル(名人・竜王・王位・王将・王座・棋聖・棋王)の全て永世称号を有する。史上唯一人。

  タイトル獲得数99期は歴代最多。通算対局数は2000局を超え、通算勝利数も歴代最多の1434勝(更新中)。

  そして、何より史上最強の根拠は、通算勝率が7割を超えていることだ。

  タイトルを1期獲得することもできない棋士が8割。1年間だけ勝率7割を記録することも困難な中、この実績である。

  藤井聡太君(棋聖・王位)が将来羽生さんを抜く可能性は大いにあるが、最速でも15年以上先の話である。


  次の話    前の話    索引     TOP-s