七歩の詩(ななほのうた)  作:曹植


【還暦ジジイの説明】

 三国時代、父・曹操(そうそう)が亡くなった後、長男・曹丕(そうひ)が跡を継いだ。

 狹量で臆病な曹丕は、弟たちの謀反(むほん)(おそ)れ、亡き者にしようと(はか)った。


 詩才豊かで聡明な三男・曹植(そうしょく)

 「題は兄弟。しかし、兄弟の文字を使ってはならない。」

 の条件で詩作を命じたのだ。

 (あまつさ)え、「七歩歩くうちに詩作せよ」と。


 曹丕は、不出来であれば、斬首(ざんしゅ)する腹積りだったのだ。

 ところが、曹植は、見事な詩を作り、曹丕だけでなく、その場に居た文官達をも感服させ、斬首を免れた。

 正しく、命懸けの詩作だった。


【原文】


 七歩詩  作:曹植

 煮豆持作羹 漉鼓以為汁 

 萁在釜下燃 豆在釜中泣

 本是同根生 相煎何太急


【読み下し文】


 七歩詩(ななほのうた)  作:曹植(そうしょく)

 豆を煮て持て羹(あつもの)と作(な)し、鼓(し)を漉(こ)して以て汁と為す、

 萁(まめがら)は釜下(ふか)に在りて燃え、豆は釜中(ふちゅう)に在りて泣く。

 本(もと)同根(どうこん)より生ずるに、相(あひ)煎(に)ること何ぞ太(はなは)だ急なると。


【現代口語訳】


 豆を煮て濃い汁を作る。豆で作った調味料を濾(こ)して味を調える。

 豆がらは釜の下で燃え、豆は釜の中で泣く。

 豆も豆がらも同じ根から育ったものなのに、豆がらは豆を煮るのにどうしてそんなに激しく煮るのか。


【真意】


 貴方(兄の曹丕)も、私(曹植)も、同じ母から生まれた兄弟ではないか。

 それなのに、何故、貴方は、私を追い詰め、悲しませるのか。


【解説】

 曹植は後に杜甫が現れるまで「詩聖」と呼ばれるほどだった。

 まだ新体詩が確立する前の時代、曹植は「五言」の詩型を作り上げる上で大きな役割を果たした。

 才能あふれる曹植は父・曹操に可愛がられて育つが、父の死後は徹底して兄やその息子に(いじ)められ、

 都に戻ることを許されず地方を転々として41歳の若さで亡くなった。



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