ちょっと一服  その106  朋遠方より来る。その1            2025.5.20



 三十年間、年賀状で再会を望んでいた先輩から喪中葉書が届いた。

 勿論、葉書を(したた)めたのは奥さん。

 私は、「嗚呼!」と(ほぞ)()んだ。


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 先輩は永らく東京に単身赴任だった。

 五年前、定年退職後、帰阪し、余生を楽しんでいる、との添え書きがあった。

 この時、私の方から誘えば、再会出来たのだ。

 しかし、どういう訳か、気が進まなかった。


 臍を噬んだ途端。

 幼馴染の顔が、数人、思い浮かんだ。


 今のうちに会っておかなければ・・・


 一人は、幼い時から秀才と呼ばれていて、見事に大阪大学を卒業したM君。

 家はお寺で住職を継いで居るから、住所も電話番号も変わらない。


 五十年振りに電話すると、彼は私を幼名で呼んだ。

 永らく聞いていなかった幼名は、一挙に五十年間を吹き飛ばした。


 三日後、お寺の宅に伺って約1時間近況を話して別れた。


 (ついで)にもう一人、幼馴染を訪ねた。

 五十歳の同窓会から十五年振りだ。

 高校時代に最もよく遊んだ悪友のO君。(笑)

 十五分ほど立ち話をして別れた。

 帰りに悪友は、段ボール一杯の野菜を持たせてくれた。(笑)



 今回の「遠方から来る友」は、私でした(笑)



 << その2に続く >>


【故事諺の説明】

 「朋有(ともあ)り、遠方(えんぽう)より()たる。(また)(たの)しからずや」


 〔口語訳〕 友人が遠方から尋ねて来る。なんと楽しいことではあるまいか。

 〔意味〕 遠いところから訪ねて来た親友と酒を酌み交わし、歓談するのは人生の大きな楽しみである。

 〔訓読〕 朋有り、遠方より来たる。亦楽しからずや。

 〔原文〕 有朋自遠方来。不亦楽乎。

 〔出典〕 『論語』「学而編」


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