春本版『四畳半襖の下張』(よじょうはんふすまのしたばり)


 全文 その27


 (その)心地、開中(かいちゅう)にあるよりは又別段の快味(かいみ)に、此方(こなた)も負けじと舌を働す中、

続けさまにぐツとこかれていよいよたまらず、

もう行くからと、腰を浮して取らんとすれど、

(くわ)へたなりにて放さず、一きは巧な舌のはたらき、

ウムと覚えず女の口中にしたゝか気をやれば、

女も同じく気をやると見えて、泉の如く出しかける淫水(いんすい)

(おとがひ)より胸へとべたべたつたはる、まして今度こそは後先(あとさき)(うらみ)なく、

人には話されぬいやな真似(まね)仕盡(しつく)して流石(さすが)に夜が明けてから顔見合すも恥しきばかりなる。


 【解説】


〇開中(かいちゅう) ・・・ 女性器、膣の中の意。「ご開帳」は陰部を見せることを指す。

〇快味(かいみ) ・・・ 

〇淫水(いんすい) ・・・ 女性が性的に興奮したときに膣から出す粘液。ラブジュース。

〇頤(おとがい) ・・・ 下あご。あご。


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