春本版『四畳半襖の下張』(よじょうはんふすまのしたばり)
全文 その25
されどどうしたものか一物容易に立上らぬにぞ、
女最早や奥の手出すよりせん方なしと思ひてや、
ほんとにおつかれ筋なのね、と言ひながら潜るやうに後じさりして、
それとなく男の乳を静に嘗め、やがて一物を口にふくみて、
舌の先にて鈴口を撫でる順取り呆れた程上手なり。
今まで幾年となく諸所方々遊び歩きしが、これ程の容色にて、
これ程の床上手にはまだ一度も出会つたことはなし。
【解説】
一物(いちもつ)・・・男根。ペニス。
せん方なし(せんかたなし)・・・どうしようもない。
おつかれ筋(おつかれすじ)・・・お疲れ様の様子。
鈴口(すずぐち)・・・陰茎の先の方。
順取り(じゅんどり)・・・段取り。
容色(きれう/きりょう)・・・ 容貌と顔色。みめかたち。また、みめかたちが良いこと。美貌。