『四畳半襖の下張』(よじょうはんふすまのしたばり)


 全文 その22


 又二度三度とつゞけさまに気をやり、

四度目五度目に及びし後はもう何が何だか分らず、

無闇(むやみ)といきづめのやうな心持にて、

骨身のくたくたになるまで男を放さぬ女もあり。


男一遍行ふ間に、三度も四度も声を揚げて泣くやうな女ならでは面白からず。


男もつい無理をして、明日のつかれも(いと)はず、入れた(まま)蒸返し蒸返し、

一晩中、腰のつゞかん限り泣かせ通しに泣かせてやる気にもなるぞかし。


 【解説】


〇蒸返し(むしかえし)・・・女陰に挿入した男根を抜かずに、何度も続けて交合すること。

  但し、「蒸返し(むしかえし)」ではなく「燕返し(つばめがえし)」の可能性あり。

  春本版『四畳半~』は、地下出版であり、当時は手書きで転写しているので、間違いが発生した可能性が高い。

  また、原作者であろう永井荷風が認めていないので、原文からの誤植のチェックがされよう筈もない。


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    燕返し


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