春本版『四畳半襖の下張』(よじょうはんふすまのしたばり)


 全文 その19


 どうやら此方(こなた)もよくなつて来さうなれば、

これではならぬと上になつて、

浅く腰をつかひ、只管(ひたすら)親指のみ働かすほどに、

女は身を(ふる)はせ、夢中に下から持上げて、

襦袢の袖かみしめ、声を呑んで泣き入る風情(ふぜい)


 肌身と肌身とはぴつたり合つて、女の乳房わが胸にむず(がゆ)く、

開中(かいちゅう)は既に火の如くなればどうにも我慢できねど、

こゝもう一としきり辛棒すれば女よがり(じに)するも知れずと思ふにぞ、

息を殺し、片唾(かたづ)を呑みつゝ心を他に転じて、

今はの(きは)にもう一倍よいが上にもよがらせ、

おのれも(しずか)に往生せんと、

両手にて肩の下より女の身ぐツと一息にすくひ上げ、

膝の上なる居茶臼(いちゃうす)にして、

下からぐひぐひと突き上げながら、

片手の指は例の急所攻め、

尻をかゝえる片手の指女が肛門に当て、

尻へと廻るぬめりを以て動すたびたび徐々(そろそろ)くぢつてやれば、

女は息引取るやうな声して泣きぢやくり、いきますいきます、

いきますからアレどうぞどうぞと哀訴するは、前後(あとさき)三個処の攻道具、

その一ツだけでも勘弁してくれといふ心歟(こころか)


 【解説】


〇開中(かいちゅう)・・・「開」は「ぼぼ」と読み、女陰のこと。よって開中は膣の中のこと。

〇居茶臼(いちゃうす)・・・性技四十八手の一つ「座位」のこと。「帆掛け」「時雨茶臼」などもある。

  


〇尻をかゝえる片手の指女が肛門に当て・・・ 尻を抱える〔私の〕手の指〔を〕女の肛門に当て

〇くぢつて ・・・ 「くじって」。陰核(クリトリス)や女陰の中を指でこすり回すこと。


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