春本版『四畳半襖の下張』(よじょうはんふすまのしたばり)


 全文 その11


 およそ女の尻あまり大きく引臼(ひきうす)の如くに(たいら)きものは、

抱工合(だきぐあい)よろしからざるのみか、

四ツ這(よつんばい)にさせての後取(うしろとり)勿論(もちろん)なり、

(ひざ)の上に抱上げて居茶臼(いちゃうす)の曲芸なんぞ到底できたものにあらず。


 女は胴のあたりすこしくびれたやうに細くしなやかにて、

下腹ふくれ、尻は大ならず小ならず、

(まる)くしまつて内股あつい程暖(ほどあたたか)に、

その肌ざはり網の如く(なめらか)なえば、

道具の出来すこし位下口(したくち)なりとて、

術を(みが)けば随分と男を(まどわ)し得るべし。


 【解説】


〇後取(うしろとり)・・・性技の「(ひよどり)越え」。後背位。今風では通称「バック」のこと。

 


〇居茶臼(いちゃうす)・・・性技の「座位」の一つ。「帆掛け」「時雨茶臼」などもある。

 


〇道具(どうぐ)・・・女の性器、膣、女陰のこと。

〇下口(したくち)・・・「下つき」〔膣の位置がやや肛門側〕のことで、味わい良からずと言われた。


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