『銭形平次捕物控』 「傀儡名臣」 六  (くぐつめいしん)  著:野村胡堂 より一部抜粋


【還暦ジジイの解説】


 「傀儡」は訓読みの「くぐつ」と音読みの「かいらい」がある。

 意味は同じで「あやつり人形」。

 「くぐつ」は、昔の人形の一種。歌などに合せて踊らせるあやつり人形。

 よって、江戸時代の話である「銭形平次」は、勿論、「くぐつ」と読む。

 「かいらい」は、現代でよく使われるのは、「傀儡政権(かいらいせいけん)」だろう。


【本文】 註:旧かな遣い、正漢字で書かれています。


 石田清左衛門は提灯(ちようちん)()けて、二人を戸外(そと)へ送り出しました。

 「えいッ」

 闇の中で、不意に平次の声。

 提灯を差出すと、軒下に仲間(ちゆうげん)風の男が一人、見事な当身を喰わされて目を廻しておりました。

 「これが森三というのでございましょう。私どもの話を立ち聴きして、注進に出かけるところでした。明日まで窮命(きゅうめい)させましょう、縄と手拭を――」

 平次は正体もない森三をキリキリと縛り上げると、猿轡(さるぐつわ)を噛ませて、物置の中へ放り込みました。

 「さア参りましょう」

  


【語彙説明】


〇仲間/中間(ちゆうげん/ちゅうげん) ・・・ 江戸時代、武士に仕えて雑務に従った者の称。小者。

 仲間風とは、仲間ぽい、仲間と思われる風貌、身なりのことだろう。

〇窮命(きゅうめい) ・・・ こらしめのために謹慎などをさせること。また、運命がきまわること。非常に苦しい目にあうこと。つらい目にあうこと。



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