『銭形平次捕物控』 「禁制の賦」 二  (きんせいのふ)  著:野村胡堂 より一部抜粋


【還暦ジジイの解説】


 「(まま)しい仲」なんて聞いたことないですね。

 まあ、切っても切れない仲だろうなあ、と想像しますよね。

 正解でした(笑)


【本文】 註:旧かな遣い、正漢字で書かれています。


 町内の御用聞、佐吉が驅け付けたのは、それから又一刻(ひととき)も經つた後のことです。

 一と通り樣子を聽いて、お百合の死骸を見ると、

 「すまねえが、お内儀(かみ)に番所まで來て貰はうかえ」

 (さび)のある聲が、藤左衞門とその若い女房の玉江を(ちゞ)み上がらせます。

 「親分、――(まゝ)しい仲には違ひないが、この女は、そんな大それたことの出來る女ぢやありませんよ」

 藤左衞門は一應(いちおう)女房を庇護(ひご)しました。

 「いや、配偶(つれあひ)の言ふことなどは(あて)になるものぢやねえ」

 佐吉は少し光澤(つや)のよくなつた頭を頑固(ぐわんこ)らしく振ります。

 「御新造さんぢやありませんよ、親分さん」

 下女のお(しの)です。

 二十一歳の純情をぶちまけて、自分達には此上(このうえ)もなく良かつた、主人の妻を救ふ氣になつたのでせう。

 「お前なんかの口を出す場所ところぢやねえ、引込んでゐるがいゝ」


【語彙説明】


〇繼しい仲/継しい仲(まましいなか) ・・・ 親しい仲。切っても切れない間柄。



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