『銭形平次捕物控』 「火の呪ひ」 四 (ひののろひ) 著:野村胡堂 より一部抜粋
【還暦ジジイの解説】
本で読む方が、テレビや映画で観るより、圧倒的に感銘を受ける。
唯一、テレビや映画の方が優る部分は、映像で観なければ想像がつかいない物が沢山ある場合だ。
例えば、外国の昔の風景や服装、習慣など。
しかし、日本の現代人は、江戸時代などの風俗、文化が分からなくなった。
それも、時代劇などでも公開されていない習慣がある。
一番公開されていないのが、下半身事情だ(笑)
私は、これを少しづつ調べて、紹介して行こうと思う。
【本文】 註:旧かな遣い、正漢字で書かれています。
(八五郎) 「何があるんです、親分」
(平次) 「落書だよ。――今夜は月がないし、それにこの様子なら晴れだ」
「落書がどうしたんで?」
「放火と落書との因縁に気が付いたのさ。橋の欄干や、堂宮に放火仲間の合圖の落書があるんだ」
「ヘエ――」
「俺は堂宮を見て來る。いゝか、欄干の後を見るんだよ、大抵は消し炭だ。目印は二重になった菱、判つたか」
「ヘエ――」
平次は何時の間にやら、二重菱の印は放火仲間の暗號で、それが火事のあつた時に諸々の橋の欄干、堂宮の玉垣などに書かれてゐることに氣が付いたのです。
【語彙説明】
〇堂宮(どうみや) ・・・ 仏堂と神宮。お堂とお宮。寺や社(やしろ)。
仏道(ぶつどう) ・・・ 仏像を安置する殿堂。仏殿。
神宮(じんぐう/かんみや/しんきゅう) ・・・ 神をまつる宮殿。神のみや。神殿。
〇暗號/暗号(あんごう) ・・・ 第三者に漏れないように、当事者間でのみ解読できるよう取り決めた特殊な記号や文字。
〇玉垣(たまがき) ・・・ 神社・皇居の周囲にめぐらした垣。斎垣(いがき)。瑞垣(みずがき)。