『銭形平次捕物控』「金蔵の行方」 六 (きんぞうのゆくえ) 著:野村胡堂 より一部抜粋


【還暦ジジイの解説】


 「甘やかされ放題に育った箱入娘が ・・・ こんな人格の破産者になるのでしょう。」

 テレビドラマで観た『銭形平次』には、こんな含蓄のあるナレーションの記憶はありません。

 まあ、小学生でしたから、素通りしたのでしょうか ・・・ (笑)


 益々、銭形平次の読書が面白くなった。


【本文】

(平次) 「気の毒だが、金蔵の死骸(しがい)が見付かったぜ」

(お茂) 「まア」

(平次) 「念仏でも(とな)てやるがいい」

 平次はお茂が思いの(ほか)平気なのに少し張合い抜けがした様子です。

 甘やかされ放題に育った箱入娘が、境遇の激変の中に(もみ)み抜かれると、どうかしたはずみで、こんな人格の破産者になるのでしょう。

(お茂) 「でも、気の毒ねえ」

 少し芝居じみた調子が、女が美しいだけに平次の胸を悪くさせます。


【語彙説明】

〇称える/唱える( となえる/となへる) ・・・

  1.声に出して言う。声を立てて読む。「お題目を―・える」「呪文を―・える」

  2.大声で言う。さけぶ。「万歳を―・える」

  3.人に先んじて言いだす。首唱する。主張する。「新学説を―・える」「異議を―・える」

  4.(称える)名づけていう。呼ぶ。称する。「みずから救世主と―・える」



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