『富木殿御書』 (ときどのごしよ)   その6



【ジジイの説明】





<富木殿御書>

 

【現代口語訳】


 お尋ねするが、いまあげた三大師のことを謗法というのはなぜか。

 比叡山の第二祖円澄寂光大師・別当の光定大師・安慧大楽大師・慧亮和尚・安然和上・浄観僧都・檀那僧正・慧心先徳等

 これらの数百人の伝教大師の御弟子たち、さらに弘法大師の御弟子である実慧・真済・真雅といった数百人、

 ならびに八宗・十宗等の大師や先徳は、、日と日、月と月、星と星とが並び出て照らし合っているようでありながら、

 既に四百余年を経ているのに、これらの人々は一人も三大師の謗法について疑いを持った者がいない。

 それなのにあなたはどのような知識をもってそのように謗法だというのであるか。

 こうした質問の意図をするところを考え合せてみるのに、我が一門の人々は、夜は眠る時間を惜しみ、

昼間は少しの暇間な時間であっても無駄にせず、この問題について充分に学び考えるべきである。

 そして一生を空しく考えることもせずに過ごしてしまって、あとで悔いを万歳にまで残すようなことがあってはならない。

 恐れ乍ら謹んで申し上げる。

   八月二十三日

                                        日蓮 花押

  富木殿

 布施のお金一結はまさに受領いたした。

 同じ信仰の志をもった人々は一か所に集まって、この旨をお聞きになるべきであろう。


【読み下し文】


 問うて(いわ)く、(かみ)()ぐる所の三大師を謗法と疑うか。

 叡山(えいざん)第二の円澄寂光大師(えんちょうじゃっこうだいし)別当光定(べっとうこうじょう)大師・安慧大楽(あんねだいらく)大師・慧亮和尚(えりょうわじょう)安然和上(あんねんわじょう)浄観僧都(じょうかんそうず)檀那僧正(だんなそうじょう)慧心先徳(えしんせんとく)

 此等(これら)の数百人、弘法の御弟子実慧(みでしじって)真済(しんさい)真雅(しんが)等の数百人、並びに八宗・十宗等の大師先徳(だいしせんとく)、日と日、月と月、星と星

 と並びに()でたるが如く、既に四百余年を経歴(きょうりゃく)す。

 此等の人々一人(いちにん)として(この)()(うたが)わず、汝何(なんじいか)なる()を以て之を難ずるや云云。

  此等(これら)(こころ)を以て之を案ずるに、我門家(わがもんけ)は夜は眠りを()ち、昼は(いとま)(とど)めて之を案ぜよ。

 一生(むな)しく(すご)して万歳(ばんざい)()ゆる事(なか)れ。

 恐恐謹言(きょうきょうきんげん)


   八月二十三日

                       日蓮 花押

 富木殿


 鵞目一結給(がもくひとゆいた)候畢(そうらいおわ)んぬ。

 志有(こころざしあ)らん諸人(しょにん)一処(いっしょ)聚集(じゅしゅう)して御聴聞有(ごちょうもんあ)るべきか。


【原文】








【語彙説明】








*----------*

【出典 参照】

 『日本思想体系 14 日蓮』 「富木殿御書」 p.211~216  1977年発行 岩波書店

 『日蓮聖人全集 第四巻』 「富木殿御書」 p.211  日蓮・著 渡辺宝陽・編集  春秋社



 次へ   前へ     小部屋    TOP-s