春望(しゅんぼう)   作:杜甫(とほ)


【還暦ジジイの呟き】


 杜甫は、

 「言葉が人の心を動かせなければ死んでも死にきれない」

 と、名言を残しています。

 凄いですね。

 私は、機会あるごとに、心の中で繰り返してみました。

 一字一句に心血を注いだんだなあ~、と、心打たれます。


 杜甫は律詩の名人と謳われました。

 『春望』は杜甫が46歳(西暦757年)、杜甫は安禄山の乱に巻き込まれて長安で軟禁状態だったときに書かれた五言律詩。

 杜甫の代表作として、誰一人知らない者がいないほどである。

 「国破れて山河在り」は、古今の絶唱と賞され、日本でも有名です。

 松尾芭蕉が『奥の細道』でも引用している。芭蕉は、杜甫の詩集を携え旅をしていたことはよく知られている。


【原文】


  春望   杜甫


 國破山河在  城春草木深

 感時花濺涙  恨別鳥驚心

 烽火連三月  家書抵萬金

 白頭掻更短  渾欲不勝簪


【読み下し文】


  春望(しゅんぼう)   杜甫(とほ)


 国破(くにやぶ)れて山河在(さんがあ)り、(しろ) (はる)にして、草木(そうもく)深し

 (とき)に感じては、花にも涙を(そそ)ぎ、別れを(うら)んで、鳥にも心を驚かす

 烽火(ほうか) 三月(さんげつ)(つらな)り、家書(かしょ) 万金(ばんきん)(あた)

 白頭(はくとう) ()けば(さら)(みじか)く、(すべ)(しん)()へざらんと(ほっ)


【現代口語訳】


 国都(長安)は(戦争で)破壊しつくされて、昔の姿をとどめているのは山河だけだ。

 (荒れ果てた長安の)城内にも春がめぐってきて、いまや草木がこんもりと生い茂っている。

 この先ゆき多難な時局を思うと、美しい花を見ても涙がこぼれるし、

 (家族や)親しい人々との別れを嘆いては、鳥の声にも胸騒ぎがする(心が痛む)。

 のろしの火(戦火)は三ヶ月に(わた)ってもやまず、

 家族からの手紙は万金の値打ちがある(全く来ない)。

 白髪(しらが)の頭は、(心労で)掻けば掻くほど短くなって(髪の毛が抜けて薄くなる)、

 (冠を止める)(かんざし)も挿せなくなりそうだ。


【解説】

 形式は、五言律詩。  深・心・金 ・簪が韻を踏んでいる。

 作詩された時代は、盛唐(西暦758年)。


【語彙説明】

〇国 ・・・ 国都。長安を指す。国家を指すのではない。

〇城 ・・・ 城壁で囲まれた都市全体を指すことば。長安城。

〇連三月 ・・・ 三ヶ月間つづく。一説に、去年の三月から今年の三月まで、三月が二度つづいた、と解する。

〇簪(かんざし) ・・・ 当時は男も髪を結い、仕官している人は簪で冠を髪にとめていた。


【参照文献】

 『中国名詩選 (中)』  岩波文庫  松枝茂夫・編  1996年4月5日 第27刷


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