その4
「正字体」について
〇正字体(せいじたい)
正字体とは、漢字の書写において正規の字体で書かれた文字を指す。「正字」「正体」ともいう。
正字体とは、正規かつ正統な字体で書かれた文字を指す。
現在の日本では、基本的に『康煕字典』に載録された字体が正字体の基準とされ、日本の新字体やチャイナの簡体字は、通常正字体とはみなされない。
正字体に対し、非正規の字体で書かれた文字(例えば「働」を「仂」、「職」を「耳+ム」と書いたもの)は「略字」「俗字」「通用字」などと呼ばれる。
正字体と略字・俗字・誤字との区別は、学術的権威に依拠した慣習によるが、歴史的経緯により、『康煕字典』のように政治権力の制定した標準に依存するところが大きい。
誤字に対する「正しい字」という意味で「正字」という言葉が用いられる(これは文字の正誤を論ずる場合のみに限定された用法)ので、当ホームページでは「正字体」と呼ぶ。
以上
【解説】
○『康熙字典』(こうきじてん)
『康熙字典』は、チャイナの漢字字典である。
清の康熙帝の勅撰により、漢代の『説文解字』以降の歴代の字書の集大成として編纂された。
編者は張玉書、陳廷敬ら30名で、6年の編集期間を経て康熙55年閏3月19日(1716年)に完成。
全12集42巻、収録文字数は47,035字にのぼり、その音義(字音と字義)を解説している。
字の配列順は先行字書である『字彙』『正字通』が部首の画数順、同部首内の文字の画数順によっているのに倣ったものだが、「康熙字典順」という呼称が使われているように、後の部首別漢字辞典の規範となった。
情報化時代においてはUnicode内の漢字コードの配列順にも使われている。
〔版本〕
発行以来、各種の版が作られているが清朝内務府が発行した初版のものは「内府本(殿版)」と呼ばれる。
日本では1780年(安永9年)、『日本翻刻康熙字典』として翻刻された版が最初のもので「安永本」と呼ばれる。
いずれも木版によって印刷された。