子爲父隠 『論語』 子路篇
「子爲父隠」(しい‐ふいん)
【意味】子供は、父親の犯した罪を隠す。
【真意】身内を庇うのが本当の誠実(正直)である。
【原文】
葉公語孔子曰、吾黨有直躬者、其父攘羊、而子證之、
孔子曰、吾黨之直者異於是、父爲子隱、子爲父隱、直在其中矣。
【書き下し文】
葉公、孔子に語りて曰わく、吾が党に直躬なる者あり。
其の父、羊を攘みて。子之を証す。
孔子曰わく、吾が党の直き者は是れに異なり。
父は子の為めに隠し、子は父の為に隠す。直きこと其の内に在り。
【現代語訳】
葉公が孔子に言いました。
「私の村には『正直者の躬』と呼ばれる男がいます。彼は父親が羊を盗んだことを証言しました。」
孔子はこれを聞いて、
「私の村の正直者は違います。父は子の罪を隠し、子は父の罪を隠します。本当の正直とはそう云うものです。」
と言った。
【解説】
葉公(しょうこう)・・・春秋時代、楚の重臣。姓は沈。名は諸梁。字は子高。
父は呉の伍子胥と戦って敗死した楚の名将・沈尹戌。
故事『葉公、龍を好む』で知られ、後世の評価は低い。
しかし、春秋左氏伝によると楚恵王から令(宰相)と司馬(軍事長官)に任じられるほどの名将。
また、仁義に厚く民衆に慕われたと云う逸話も残っている。
党・・・村。五百軒の家を一党という。
直躬・・・正直者の躬という名の男。
証之・・・子(躬)が盗んだことを証言した。
【四字熟語】「父爲子隠」(ふい‐しいん) / 「子爲父隠」(しい‐ふいん)
【出典】 『論語』子路篇 第十三の十八
【出題】 漢検 準1級