えっ?ひょっとして私だけ?


 第6話 幾齢(いくつ)になっても


 一月中旬、夜の帰り道。

 自転車のお(ばあ)ちゃんが、すてーん、と、

 気持ちよく、転(こ)けた(笑)


 歳を取ると、アキマヘンなあ~、お互いに!

 なんて台詞(せりふ)を思い浮かべながら、直ぐさま駆け寄り、

 「大丈夫ですかー」

 と、半笑いで声をかけた。


 ところが、驚いたことに、お婆ちゃんと思いきや、なんと、女子高生!

 私は眼鏡を掛けてなかったし、夜だから、見誤った。


 もし、女子高生と判っていたら、声なんて掛けなかった。

 でも、その子は、気立ての良い子だったんですねー

 「有難うございます!大丈夫です!」

 って、やや恥ずかしいそうに、笑顔。


 私は、あー良かった、と、胸を撫で下ろしました。

 もし、助け起しでもしていたら ・ ・ ・ ねー

 平手打ちされて、痴漢呼ばわり、でしょう?

 あー、怖い!


 と、ここまで書いたら、私って、内気で良心的なお爺ちゃんに見えるでしょう?


 実は。

 本心を吐露すると、慙愧(ざんき)()(がた)いところでありますが、()えて告白します。

 私は、なんと ・ ・ ・

 一ケ月後のバレンタインデーの日、同じ時刻、同じ場所に、(たたず)んでしまったのです。

 キャーッ!恥ずかしい!


 ねえ、御同輩、ご経験あるでしょう?

 ある!って言ってください!


 えっ!?

 無い!!
 ひょっとして、私だけ!?


【教訓】

 私も高校生ならね。

 可能性あったかもしれませんが・・・

 還暦ジジイが、何を血迷っているんでしょうか?

 情けない!

 はははは


【語彙説明】

 幾齢(いくつ)・・・ 当て字です。

 文例: 「そうかい。奉公に行くのかい。お前は幾齢になった」 『幕末維新懐古談』安床の「安さん」の事/高村光雲・著


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