その45 最高の贈物 その2
尊敬する或る大学教授(以下「先生」)から直筆著名入の著作を貰った、と昨日、書いた。
欣喜雀躍!
私は、御礼を考えた。
本の代金?
そんなものは、何の価値もない。
ふと書棚を見ると、会社から無断で持ち帰った取引銀行の薄い小雑誌が目に入った。
この小雑誌(四六判)は、取引先の大手銀行の相談役が、司馬遼太郎の著作について書いたもの。
相談役は読書家で司馬遼太郎のファンだったのだろう。
しかし、当然ながら行内だけで発行されている私家製版である。
私はそれを複写して、先生へ贈った。
まあ、どうせ何の価値もないだろう(失礼!笑)
と、思っていた。
よく創業者が唆(そそのか)されて自分史を製本し、取引先や知人に無理強いして購入させる例がありますね。
その類の本かなあ、と。だから、常務も読んでなかった。フフフ
ところが ・ ・ ・
数日して、同大学文学部N助教授から、和紙に毛筆の手紙が届いた。
和紙の封筒に、丁寧な文章。
もうそれだけで恐れ入ってしまった。
N助教授は、司馬遼太郎全集を編纂しているらしく、是非、小雑誌の製本版を3部、欲しいと云うもの。
私は、N助教授へ、私の上司である常務へ依頼して欲しい、と、返信した。
それから数日後、私は、常務から呼び出された。
無断で持ち帰り、無断で複写して他人に渡しているのだ。
当然、叱責される ・ ・ ・ かも、と。
しかし、案の定。
常務は上機嫌だった。
ホッ!
私が経緯を話すと、常務は意気揚揚と銀行へ。
フフフ
多分、銀行の支店長も上機嫌だったのでしょう。
そりゃそうでしょうね。
支店長の上司である相談役の喜ぶ顔が浮かびます。
あっはははは
後日、無事、製本版3部はN助教授に届いた。
私の人生で最も上手く事が運んだ手柄話です。
あっはっはっはっはっ
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【解説】
四六判(しろくばん)とは、188×130mmの大きさの本。
前述の本は、厚さは5㎜程度の代物でした。