ちょっと一服  その26 触らぬ神に祟りなし      



十年前、妻は瘦せようと、フィットネスクラブへ通っていた。

最初は私が「入会するよ」と声を掛けたら、彼女が「私も!」

と、二人で始めたのだが、私は一か月もせず退会。

しかし、妻は凄い!

  「凄い」と云う字は「妻」に「ン」〔「冫」(イッスイ)偏〕と書きますが、
  これはきっと、「凄い!さすが俺の妻だ!うん!うん!」
  と云うところから成ったんでしょうねえ(笑)

妻は、1年以上も熱心に続けた。

私の妻の長所は、とにかく何でも始めたら、三日坊主ということがない。

本当に尊敬に値する。


ところが、或る日、ポツリと仰った。

「なんで効果がでないのかなあ~。食事も減らしてるのに・・・」

ちっとも痩せないことを嘆いておられる。

私は、心底気の毒に感じ、憂い顔で、

「体質があったりするからなあ。でも、脂肪が筋肉に変わってたらええやん」

と慰めた。

しかし、妻の表情は晴れない。

私は他に励ます言葉はないか、探した。

すると、妻が、シンミリと

「間食するのが悪いのかなあ」

と、ポツリ。

私は、思わず吹き出しそうになった。

だが、そんな空気じゃない。

グッと奥歯を噛みしめて、慎重に妻の表情を伺った。

真剣に悩んでいる様子。

余計に可笑しくなったが、破顔しそうな心内(こころうち)を悟られまいと、そっと背中を向けた。


そんな事があってから、数年後。

冗談半分に、

「間食をやめたら?」

なんて気安くアドバイスしたら、逆ギレされた。

わ~っ!シマッタ!!

「いや、そんなつもりじゃあ・・・」

とタジタジの私に、

「じゃあ、お酒やめられる?」

と、反撃された。

なるほど~

二の句が告げない。(汗)


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