ちょっと一服  その51 ()に恐ろしきは妻の観察眼        



近所に住む90歳近いお(ばあ)ちゃんが、毎日、黙々と周辺を掃除する。

そのお婆ちゃんを見掛けなくなったと家内が心配するので、隣の家に訊ねると、なんと交通事故で入院していた。

と云う話を前回書きました。



(じつ)は、家内、こんな発見をするのが二度目なのです。


十年前、マンションの隣の号室に一人暮らしの男性(多分、65歳前後)が、住んでいた。

顔を合わせるのは一ト月に一度あるかないか。

悪そうな人ではないけど、寡黙で喋らない、会釈するぐらいなもの。


家内は、毎朝、ドアポストに差し込んである新聞を表に出てから抜く。

その時、当然、隣のドアポストも、見るとはなしに見る。


或る日の朝、隣のドアポストに新聞が2日分差し込まれているが、過去、こんなことはなかった、と不思議がる。


例によって、(たし)かめて来い、と私に命令が(くだ)る。

早速、管理人に訊ねると、

「留守にするときは、必ず、声を掛けてくれるし。新聞屋にも連絡してるみたいでしたけどねえ」

とのこと。

なんだ、益々、怪しいじゃあないか。


ところが、管理人は、迷惑そうな顔をする。

えっ?

礼を言うべきところじゃないの?

と思いつつ、あとは管理人に任せた。


夕方、外出から戻ると、隣の号室の前に人集(ひとだか)りができている。

管理人、警察官、大層な道具を持った人の3人。

これから踏み込もうとする矢先だった。


おっ!FBIかSWATか?

なんて、巫山戯(ふざけ)たことが頭に浮かんだのは、朝の管理人の不機嫌な顔の所為(せい)です!

うん!


結局、隣の男性は、居間で倒れて亡くなっていたとのことでした。

脳卒中か、何かで、変死ではなかったらしい。

いや~、お気の毒でした。


だから、一人住まいってのは、怖いんですよね。

我等がアイドル・大原麗子さんもそうでしたよね。


まあ、それにしても、()に恐ろしきは、家内の観察眼。

えっ!?

そんなの普通じゃあないか、って?

あははは

そう仰る貴方!

きっと貴方の浮気は、バレてますよ!

ご用心!ご用心!


【教訓】

何か異変に気付いたら、行動に移しましょう!!

私が特に心掛けているのは、幼児誘拐です。

えっ?!

自分が怪しまれる?

そうなんですよ!

本当に、そうなんです。

でもね、そこを誠意をもって乗り越えましょう。

きっと、親御さんには伝わると思いますから。


【語彙説明】

実に(げ‐に)・・・《「げん(現)に」の音変化という》

 ある事柄に対する自分の評価・判断を肯定して、さらに強調する気持ちを表す。
 本当に。実に。全く。


巫山戯る(ふざける)・・・

 1.おどけたり冗談を言ったりする。「―・けて怒ったふりをする」
 2.子供などがたわむれて騒ぐ。「子犬が―・けて跳ね回る」
 3.男女がたわむれる。いちゃつく。「人前もはばからず―・ける」
 4.ばかにする。「―・けたことを言うな」

  〔語源〕

  「巫山」は「ふざん」と読み、チャイナ四川・湖北両省の境にある名山。

  「戯」は音読みで「け」と読み、訓読みで「戯れる」と書いて「たわむれる」と読む。
  「たわむれる」とは、何かを相手にして、おもしろがって遊ぶこと。
  「巫山で戯れる」から「巫山(ふざん)戯(け)る」となり、「ふざける」となった。

  日本の象徴であり、歴史ある富士山で、馬鹿なことをすると「ふざけるな!」と叱られる。
  と、まあ、こんな気分でしょうか。


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